今日は、シャフトのしなりに関して物理的考察をしていきます。ダウンスイングでシャフトがしなっているプロの写真を見ると、いかにも飛びそうな気がしてきます。またダウンでの「ため」という言葉の中にも、しなりが意識されています。レッスン書にも「しなり」が飛ばしの大きな要因と解説しているものもあります。
しかし、何故「しなり」が大きな要因になりうるのかを物理的に考察したものは見当たりません。レッスン書でよく見るのは、鞭の例えです。私が見たウェブサイトでのレンスン記事では次のような説明がありました。「2メートルの長さの鞭を振り下ろす事を考えて見てください。同じ重さの2メートルの固い棒を振り下ろすのと比べ、先端のスピードはかなり速いのではないでしょうか。手元はわずかにスナップを効かせて振るだけでも、先端はビュンと音を立ててかな りのスピードになるはずです。(中略)ゴルフのスイングも同様に、シャフトから手首、腕を鞭のように使えればヘッドスピードが上がるはずです。」と鞭のようにしなるシャフトを使えば硬いシャフトよりヘッドは加速すると述べてます。そうするとしなりの大きい柔らかいシャフトを使えばより加速することになりますが、そういう疑問に対しては「それでは、シャフトが本当に鞭のように柔らかい素材でできたクラブはどうでしょうか。残念ながらこれはとても難しいようです。ゴルフの場合、フェイスの向きが大きな問題なので、インパクト時にシャフトがしなっていると、方向性が全く出ません。常にインパクト時が最大速度になり、フェイスも目標を向くようにするには、やはりある程度の硬さがなければならないので す。」と述べてます。おそらく多くのレッスン書もしなり効果については同じような認識だと思われます。
大きな意味では間違っていないのですが、この説明だけではゴルフにおけるしなりの意味を正確に認識できません。まず第1段階として、鞭の加速原理を理解しておきましょう。下の図は、鞭が伸びながら先端が加速する理由を説明するためのものです。
一般的に鞭は、弾力をもった材質で作られており、手元で力強く振られた鞭は弾性によって伸びていきます。左の図は、その途中の2つの状態を示していますが、青①の鞭部分の弾力でその先が赤①の速度で伸びようとし、次の段階ではこの赤①の速度に対して青②の鞭部分の弾力で得られる赤②の速度が加算されて伸びていきます。そのため鞭の先端は、どんどん加速されていきます。では、この鞭の先端部分の速度(つまりゴルフクラブで言えばヘッドスピード)を早くするにはどうしたらいいのでしょうか。先ほどの記事で硬いシャフトより柔らかい鞭のほうがヘッドスピードが上がるという理屈だけであれば、鞭の中でも硬い鞭より、より柔らかい鞭がより早く先端を振れるはずです。しかし皆さんはそうではないと気がついているはずです。より柔らかいぐにゃぐにゃの鞭では早く振れません。先端が追いついてこないからです。従ってある一定以上の弾性が必要だということです。一般に同じ材質であれば太いほど弾性が強くなりますが、同時に重量も増します。物理学によれば加速度は力(つまり弾性)を重量で割ったものです。従って単純に太くはできません。それを解決するために、鞭は先端に行くほど細い径になる形状に作られており、鞭が伸びて行くにつれ加速すべき部分の重量が小さくなるよう設計されています。このため徐々に伸びて行く鞭部分の径が細くなって弾力が小さくなっても、それに伴って加速すべき先の部分の重量が小さくなるので、先端部分の加速度が減じることなく最後まで加速されることになり大きな速度を得られます。
ただゴルフクラブは事情が違います。先端部分に総重量の3分の2もあるヘッドがついているのです。この点においても鞭での比喩は正確性を欠きます。また先の記事ではシャフトが鞭のようなしなやかな素材でつくってもうまくいかない理由を方向性にあるとしていましたが、この点の誤りを含めて次回に物理的解析を進めていきます。


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