2021年5月18日火曜日

「 ゴルフ」9 :ヘッドスピードを上げるための要因

  前回は、ヘッドスピードを上げるための要因の1つである手の円運動について話しました。皆さんもお分かりのように、ヘッドスピードを上げるための要因は多くあります。今回は、その中で手の円運動とともに最も大きい2つについて言及します。

 1つ目は、「手による縦トルク」です。トルクとは、よく自動車の加速性能を表現するときに使われますが、回転軸を中心にはたらく、回転軸の周りに運動を引き起こす能力のことで,回転を加速します。実は、前回述べた手でクラブを回す運動も、胸筋や腕の筋肉で引き起こされるトルクでもたらされます。1つ目の「手による縦トルク」とは、腕が下図にあるようにスイングの途中で、両手のグリップでクラブと腕の角度を広げて行くものです。例えば、腕を振らなくても、腕と直角に立っていたクラブを腕と同軸まで短時間で回転させれば、手元の動きは小さくてもクラブヘッドは相当早いスピードが得られます。 


 ただこれは、グリップのコックを伸ばすだけで行われるように思われるかもしれませんが、曲げていた肘を伸ばす行為でも同じです。従って高齢になり身体を曲げにくくなったり、身体が硬くて捻転しにくい人が、肘をトップで曲げても、ダウンスイングの中でうまく肘を伸ばしながら縦トルクがつかえれば何の問題もありません。

 例えば日本刀を上段に構え、正面に置いた竹を二つに切り裂くとしましょう。おそらく、重たい日本刀を上段でいきなり切っ先を上げるのではなく、まず日本刀が正面に降りるまで腕で引き、その後で柄を握っている両手で日本刀が水平に開いて行くように振り下ろし、竹に日本刀の刃が当たって行くように操作すると思います。この時も、力のない人は最初に肘を曲げて、手とともに肘を伸ばしながら日本刀を加速させると思います。そして、気がついて欲しいのは、単に片方の手首を伸ばすというのでなく、左右の手を協力させながら(右利きの方なら左手を引きながら、右手を押し出す)腕と日本刀の角度を開いていき、結果として手首の曲がり(ゴルフではコック)が解放されたということです。 
 2つ目の要因は「腕による横トルク」です。これはインパクト前後で、上半身の回転に伴った腕の回転によって発生するものです。
 人間の体の構造上、どこかで左右の腕を回転して入れ替えなければなりません。よくレッスン書で「腕を常に胸の前において、腕を返すな!」と書かれている場合がありますが、これは回転する上体に座標系があるのか、外から見ている人に座標系があるのかが不明確にしているために起きるものです。本来物理的には、そういうことは理解して説明するのが当然ですが、最近多く出版されている「物理・・」とかの本がそこまで注意して説明しているかはちょっと心配です。

 アマチュアの方で、ボールに当てたい一心や、まっすぐ飛ばそうという意識が強くて、この腕の入れ替えをしないでおこうとするといわゆるチキンウィングになります。飛ばさないパターはこの腕の入れ替えは不要ですが、この「腕による横トルク」はヘッドスピードを上げ、まっすぐ飛ばすためにも必要なので恐れず活用しましょう。
 このほかにも、ヘッドスピードに寄与する要因は、すこし影響度は小さいですが、4回目の投稿で説明した「重力」やクラブヘッド重心がシャフト軸より離れていることによる軸回転があります。またインパクト時にクラブのシャフトでの押しという要因もあります。(クラブシャフトにはこの押しとともに、途中で弾力エネルギーを一旦貯めて、インパクトに向けて吐き出すという作用がありますが、これらは後日解説します)
 そして、ここが一番重要なことですが、これらの要因は一度に同時に使うのではなく、スイングのトップからインパクトまでの間に順次(一部は重なりながら)使って行く必要があります。逆に言えばその要因を使うのに適したタイミングがあるということです。次回はその点について説明します。
 
 なお、「手による縦トルク」とか「腕による横トルク」は一般用語ではなく、このブログ内で説明しやすいようにつけた名前です。誤解なきようにお願いします。