2021年6月3日木曜日

「 ゴルフ」13 :シャフトのしなり2

 前回に続き、シャフトのしなりに関する物理解析です。前回、「 鞭のようにしなるシャフトを使えば硬いシャフトよりヘッドは加速する」というレッスン記事を紹介し、その記述の矛盾を話しました。つまり硬いシャフトより、柔らかいシャフトが飛ぶのであれば、さらにもっと柔らかいシャフトを使えば、もっと飛ぶことになりますが、実際はそうではありませんよね。飛ばすのに最適な柔らかさが存在することは、皆さんもなんとなく気づいています。しかし物理学的に言えば、もし手で常に加速し続けられるならば、もっとも硬いシャフトの方が一番ヘッドスピードが上がるのです。

 では、何故に最も硬いシャフトでなく、少し柔らかいシャフトの方がヘッドスピードがあげられるのでしょうか。それは人間はスイングの過程の中で、常に同じ力をシャフトに与え続けるのが困難だからです。


「 ゴルフ」8でも説明しましたが、加速する力が働かない円運動は等速運動です。中心に向かう向心力があるためヘッドは円軌道になりますが、そのスピードは一定です。もしヘッドスピードを上げようとすると、加速のための力を必要とします。ここで我々が勘違いしやすいのは、「腕に力をいれて振っているのだからシャフトには常に加速する力が加えられているはず」と思い込むことです。そして、「その加速する力はインパクトに向けてどんどん大きくなっているはず」というのがさらなる勘違いです。

 上の図での「向心力」は腕からもたらされる力です。しかし、この力はヘッドの加速には何の役にも立ちません。円運動を維持するためだけの力だからです。(したがって、向心力と同じ力の「遠心力で飛ばそう」というレッスン書の表現が如何におかしいか明白だと思います)ヘッドを加速するためには「 ゴルフ」8でも説明したように、別の更なる力が必要です。この力に関して上記したように我々は勘違いをしやすいことを次に説明します。

 一つの例えですが、皆さんが、ペダルを漕がずに自転車に乗っているだけの人を後ろから押してあげるとします。最初の静止した状態(時速0km)から時速10kmまで加速して押してあげるのは、そう難しいことではありません(最後の方は走りながら手で押してあげることになるかもしれませんが)。しかし、次の時速10kmから20kmへの加速はどうでしょうか? 自転車の重量は変化してませんから、加速のために加える力は同じとしても、後半は相当早く走る身体から力を入れて手で押さないと実現できません。もし時速10km以下でしか走れない身体で同様に手で力を入れても、むしろ自転車に引っ張られて減速のための力になってしまいます。

 これをゴルフのスイングに当てはめるとインパクトまでヘッドを加速しつづけるというのは簡単なことでないことが理解できると思います。腕に力が入るかというより、腕をヘッドスピードに負けないように早く回しながらシャフトに加速のための力を与えなければいけません。そのために、「ゴルフ」9でお話しした縦や横のトルクを利用することで、腕の回転速度が不足しても加速できる手段を用います。しかし、その手段がうまく使えないアマチュアには一定の加速は困難です。

 結論から言うと、シャフトのしなりというのは、インパクトに向けてヘッドの加速力を維持できない人のために、加速しつづけられるような補助と言えます。よく「ヘッドスピードが遅い人はRとか柔らかいシャフトを使え」という説明がありますが、本来は加速のステップがうまくいかない人は柔らかいシャフトでしなりを使ったほうがいい」という表現にかえるべきだと考えます。

 また、今日のWEB記事の中で、クラブフィッティング専門店経営の高山良光さんは「長年の研究でシャフトのしなり方に個人差があることを発見した」と書いておられますが、おそらく加速のステップの個人差に要因があるのではないかと推察されます。

 次回、しなりの使い方について話します。