シャフトのしなりに関する物理解析の最後です。今回はシャフトのしなりの役目と使い方に関して物理的見地でお話しします。シャフトのしなりは、切り返しから腕が水平になるぐらいまでのダウンスイングの前半で発生します。そして後半のインパクト直前では「しなり戻り」といわれるヘッドがシャフトを追い越す逆しなりが起きます(テイクバック始動時も手の動きが早いと発生しますが、これはタイミングを合わせには有効と思いますが、インパクト時のヘッドスピードにはあまり影響しないと考えますので、ここでは議論しません)。
では何故ダウンスイングの初期段階でしなりが発生するのでしょうか?
トップでの切り返しの瞬間は、クラブの重量の約3分の2を占める重いヘッドはほぼ静止状態です。それを腕の力でグリップ部分を円軌道に引き始めて加速しようとした時に、重いヘッドは慣性で止まろうとしますから、シャフトにはヘッドとグリップの両方から力が加えられます。もしヘッドが動き始めた時に、グリップの引きが常にヘッドの進行方向と同じ直線上であればしなりは発生しませんが、ヘッドは慣性で直進しようとしますし、グリップは円軌道で引き下ろそうとしますからシャフトには撓みの力がかかります。ダウンスイングの前半はヘッドスピードが遅いので、感覚的にはヘッドを加速する力が弱いように錯覚しますが、腕に力を入れなくても無意識のうちに十分な加速のための力がシャフトにかかっています。そしてヘッドがそれに追いつけない分、その力はシャフトに蓄積されていきます。つまり切り返しからダウンスイングの初期は、シャフトにエネルギーを貯めることになります。そして、そのエネルギーはダウンスイング後半の加速の補助として使われます。
前回お話ししましたが、スイングの過程の中で常に同じ力をシャフトに与え続けるのが困難なため、ダウンスイングの後半ではヘッドスピード自体は早くなってくるものの加速自体は相対的に落ちてきます。そうするとしなっていたシャフトの弾力による戻りが起こって、ヘッドの加速に寄与してきます。
ただ、プロの写真をみてみると、すこし不思議なことがあります。シャフトのしなり戻りだけによるヘッドの加速を物理的に考えると、しなりが最大の時にヘッドに与える弾力も最大になってヘッドの加速が始まり、そしてシャフトが真っ直ぐな時にヘッドスピードが最大になります。ただこの時点で弾力が解放されるため加速への寄与は0になります。そしてそのあとに逆しなりになるにつれてシャフトの弾力はヘッドを減速する方向に働きます。そうするとシャフトが真っ直ぐな時にインパクトを迎えるのが最も効率的と思われます。ところが、例えば松山プロの写真を見ると、インパクト前にすでにシャフトは逆しなり状態になっています。 最初、私の理解は、インパクトの瞬間にヘッドはボールと反対方向に弾かれますから、逆しなり状態の方がインパクト時のフェース面が安定することになり、実際にボールの弾道とスイングのマッチングを図っていく段階で自然とそういうタイミングを身体が習得したのかと考えていました。


