2021年5月17日月曜日

「 ゴルフ」8 :ヘッドスピードを上げるとは

 いよいよクラブのヘッドでボールを打ち、その結果ボールが遠くに飛ぶという現象について物理的解析をしていきます。

 当然のことながら、我々の関心事はいかに遠くにボールを飛ばすことであり、そのためにはヘッドスピードを上げることです。もちろんボールの初速はヘッドスピードだけで決まるものではなく、他の要因もあるのですが、主たる要因はヘッドスピードであるのは間違いないので、これを最初に解析し、他の要因はいずれ言及していきたいと思います。
さて、あるレッスン書では「クラブヘッドは円軌道を描き、ヘッドには遠心力が発生し、その遠心力で飛ばすんだ!」といったようなことが書かれているのを見かけたことがあります。しかし、これは物理的には間違いです。何故なら遠心力は他に作用する力ではなく、結果としての見かけ上の力だからです。高校の物理に戻って恐縮ですが、遠心力とは何でしょう?
身体の軸を中心にしてクラブのヘッドが一本化された腕とシャフトにつながれて円軌道を回っているとします。左の図で最下点に来たヘッドは、シャフトにつながれてなければ慣性力に従って、真っ直ぐ水平方向の「A」の位置に進もうとします。そのため本来の円軌道である「B」の位置に戻すためには中心方向に引っ張らねばなりません。それが「向心力」です。そしてその反作用として、引っ張っている中心の身体には「向心力」と同等の力を感じます。それが「遠心力」です。高校の物理の基礎をわざわざ持ち出したのは、これをきちんと理解してないと、レッスン書の曖昧模糊とした表現に騙されてしまうからです。
 例えば、レッスン動画で五円玉を糸で吊るしてくるくる回し、「クラブは円運動で振れば必ずボールに当たるんですよ」と言ってます。そんなのは言われなくても皆わかります。レッスン動画での説明では、手を糸の中心に据えて向心力を与えれば五円玉は高速で回っていくかのような印象を与えますが、手を中心に固定して向心力のみで引っ張っていても、五円玉は等速運動するだけです。むしろ空気抵抗とかで減速します。知りたいのはどうやってその五円玉を早く回せるかです。皆さんはどうやって五円玉を早く回しますか?

 私たちがこのような状況で五円玉を加速させようとしたときは、実は無意識のうちに本来の回転の中心の周りの小さい円軌道に沿って糸を持っている手を回しています。。つまり左の図に示したように、手が先行して小さい円を回しながら、向心力より強い力で糸を引っ張ります。そうするとその「引く力」の方向は五円玉の軌道の回転中心に向かっていないため、高校の数学で習ったベクトルの分解を使うと回転中心に向かう「向心力」と円軌道に沿った「加速力」に分解されます。この「向心力」は五円玉が円軌道を保つために使われ、一方「加速力」は五円玉のスピードを早めるために使われます。
 皆さん、もうお分かりですね!ヘッドを加速するためにはヘッドの回転軸方向に引っ張るのではなく、回転軸の周りの小さな円軌道に沿ってシャフトを引っ張って行くことが必要です。その意味でも「遠心力」では飛ばせません!そしてその「引く力」が向心力より大きい分だけ早く加速されます。またベクトルの分解図でおわかりのように手の円軌道の半径が大きいだけ加速力のベクトル成分が大きくできます。(しかし、実際のゴルフスイングの場合は、身体から離れたところで大きい力を出さないといけないのでアマチュアには要注意です。)
 それではその引っ張りだけでヘッドスピードは上がるのか?そうは問屋が卸しません。ヘッドスピード加速には、さらに大きい加速のためのあと2つぐらいの物理的メカニズムがあります。次回以降、そこを追求していきます。



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