2021年4月18日日曜日

「 ゴルフ」6 :身体を使うときのレッスンプロとアマチュアでの心理的なズレ

  前回は、人間の身体はクラブを加速させるのに適しているとは言えないと述べました。またゴルフの動作は非日常的なので心理的にも認知のズレがあるように感じます。今回は、クラブを加速させようとした時に、レッスンプロと、初心者や初級者との間には心理的なズレがあることを述べて見たいと思います。

 最近ゴルフレッスン番組が数多くあり、我々アマチュアにはありがたいことです。ただアマチュアにとって注意すべきは、あまり情報が多すぎると混乱してしまい、その結果、継ぎはぎだらけのスイングになってしまう恐れがあることです。そしてそれに加えて、レッスンプロの言っていることが必ずしも初心者の認知や感覚と合わないことがあることを認識しておくことです。

 その例を一つあげると、先日三觜プロが初心者の女性に教えるゴルフ番組があり、その中で、どうしたら強いインパクトを得られるかという課題を初心者に与え、軽い「布団叩き棒」を持たせてインパクト面に見立てたマットを叩く動作を実践させていました。その中で、初心者の女性は頭も腕もマットの方に動かしながら(右打ちの人が左にスエーしながら右肩が被ってインパクトを迎えるような動き)布団叩き棒でマットを叩いたのですが、それに対して三觜プロからダメ出しがありました。彼は、模範演技として頭を右に(つまりマットの後方に)残し、腕をマット面に叩きつけるような動作をして、「強く打とうとしたら、”当然”このような形になるでしょう」と解説し、初心者の女性も一見納得したような表情でした。

 しかし、私はここに、レッスンプロとアマチュアの認識の相違があり、この心理的なズレがあると初心者には最適な身体動作が体得できないと思います。なぜなら、通常は重い棒で重たい対象物を叩き、押し出そうとすると頭も体も左に動くのが物理学的には”自然”です。これはこのブログの「ゴルフ」4で出てきた「運動モーメント」という物理概念を使うと、大きい運動モーメントを得るためには質量の大きい頭や体幹を対象物方向に動かした方が適しているからです。つまり頭を残すことは”当然”ではないのです。なぜこのような認知のズレが生じるのでしょうか?

 その理由は2つあり、その1つは振る棒(クラブ)と対象物(ボール)が身体よりもはるかに軽いからです。2つ目はシャフトが柔らかくインパクトでの作用が小さい(つまりヘッドスピードがボールを飛ばす主たる要因)からです。これが重たいマサカリを大木に打ち付ける場合と大きく異なるところです。しならないマサカリの柄と異なり、クラブのシャフトは当たった瞬間でのボールの押しに与える影響が小さいからです(シャフトが柔らかいのはダウンスイングの時間の間に腕の慣性モーメントをシャフトに溜め込むのが理由です)。レッスンプロは頭をスエーさせないで残した方がヘッドスピードが上がることを身体で覚えた経験から知ってます。しかし多くの初心者にとってはクラブは重く、また硬く感じられ、さらにはボールを打ったときの衝撃から対象物も重いと認知が働いていると思われます。そういう人に「ボールを遠くに飛ばす」という課題が与えられれば、本能的に頭も腕もボールの方にスエーしながら右肩が被って(右打ちの人)ボールを叩きに行きます。これが心理的に正しい動作なのです。この認知が続く限り、頭のスエーと右肩の被りは治りません。従って、初心者を教えるときは、この心理的認知のズレを解消してあげる必要があります。

 そのためには、感覚的にクラブもボールも軽いという認知を得られるエクササイズと、クラブがボールを飛ばす物理学的なメカニズムを理解することにつきます。ただ以前にも述べたように、この2つ目の物理学的なメカニズムを正しく説明したゴルフレッスン書は、残念ながらまだ目にしたことはありません。このブログを書き始めてから、私も解析に考えを巡らせていますが、結構むずかしい課題です。今後このブログで、説明できるよう頑張って行きたいと思います。

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