「ゴルフ」1で、ゴルフには基本的には次の3つの知識のバランスが必要との結論に達したと述べました。
- ボールを打つ道具であるクラブの物理学
- クラブを動かす人間の身体運動学
- 人間の体を無意識に制御する心理学
今回は1の「ボールを打つ道具であるクラブの物理学」についての概論を述べてみたいと思います。クラブはもちろんボールを遠くに飛ばすために使われますが、同じ遠くに飛ばす野球のバットやハンマー投げと似ている部分と異なる部分があります。ゴルフクラブの特徴は一言で言えば「重心がヘッドと一致しない」ことです。
シャフト方向で言えば、ドライバーの場合全長が約120cmに対し、重心はグリップエンドから約85cmのところにあります(クラブによって多少異なる)。ヘッドより35cmも手前にあることになります。
また重心がシャフト軸の上になくトウ側にズレています。これがヘッドの返しの不具合でスライスになったりとアマチュアの上達を邪魔しています。中には、この重心の偏りによってボールを飛ばしたり、コントロールできるという人もいるようですが、基本的にはデメリットの方が大きいような気がします。パターはセンターシャフトのものがありますし、また多くはネックで曲がってシャフト軸の延長がヘッドの中心近くに来るよう形状設計がされています。なぜパター以外はそうなっていないのでしょうか?それはゴルフの「クラブとボールの規則」のなかの付属規則II, 1dにおいて禁止されているからです。なぜ禁止されているか?理由はセンターシャフトのクラブはやさしすぎるため、技術を競い合うことを目的としたゴルフのルールにのっとり禁止になったようです。(中村修プロの記事より)
中村プロは実際にセンターシャフトのクラブを作ってそのメリットを実証してます。https://www.golfdigest-minna.jp/_ct/17210214
さて、このゴルフクラブでボールを飛ばすわけですが、物理学でいえば静止しているボールに力を加えて加速させ、ヘッドから離れた瞬間に初速度を与えるわけです。実際には力積といって力および力のかかっている時間が問題なのでボールの弾性やヘッド面の弾力(つまり反発係数等)、およびインパクトの短い時間にシャフトがヘッドを押す力が影響します。しかし遠くに飛ばすためにプレーヤーが関与できるのはインパクトの時のヘッドスピードをいかにあげるかですよね。
ではトップからインパクトの間にヘッドはどのようにスピードを上げてくるのでしょうか?ヘッドがスピードを上げるためにはニュートンの運動法則にあるようにヘッドに力を与えないといけません。この力には2つあります。1つは重心にかかる重力で、もうひとつは両手からグリップを通して与えられる力です。(よく「遠心力で飛ばす」と書いている本がありますが、物理屋なら常識ですが遠心力では飛びません!)
まず重力でどのくらいのスピードがえられるのか?トップからインパクトまでの落差(多くて2m)をニュートン方程式で計算するとインパクト時のスピードは約6m/secしかありません。アマチュアの目安の40m/secには遠く及びません。つまりヘッドの加速は大半がグリップからの力によるものと考えられます。しかし、レッスン書に「重力を利用して落とす・・」と書いてあるじゃないか!実は腕の落下を利用してクラブの加速を図っているのです。クラブより重たい腕も重力で落下します。しかし重くても、重力で得られる落下スピードはクラブと同じです。(有名なピサの斜塔でのガリレオの実験を思い出してください。)ところが重量に比例する運動モーメントは大きく違います。私の腕の太さと長さで見積もると、重さは片腕約3kgで両方で6kgです。ドライバーの300gと比較すると両腕で20倍もあり、落下スピードは同じでも運動モーメントは20倍となります。では、それがどのようにクラブの加速につながるのか?
便宜上スイングプレーンという言葉を使うと、切り返しから腕とクラブがほぼ直角でおりて来る間はクラブ重心と手(グリップ)のスピードは同じで、角速度もほぼ同じです。ところがコックが解けて来ると回転中心からクラブ重心までの距離(回転半径)長くなります。そうすると同じスピードであってもクラブ重心の角速度は遅くなります。単純にコックがまっすぐになったとした場合、角速度は腕に比べてクラブは数分の1に落ちます。これを手を介して「グリップの力」で強制的に同調させると数倍の速さ、つまり単純な落下スピード6m/secに対し2〜30m/secまで上がってきます。この加速を効率良く行うために両腕の運動モーメントは重要なのです。加えてグリップが重要なであることが理解できると思います
そして実際はこれに加えて、両腕のターンによる加速が加わりますが、長くなったので、これ以降の解析は次回に回します。
0 件のコメント:
コメントを投稿