2021年6月9日水曜日

「 ゴルフ」14 :シャフトのしなり3

  シャフトのしなりに関する物理解析の最後です。今回はシャフトのしなりの役目と使い方に関して物理的見地でお話しします。シャフトのしなりは、切り返しから腕が水平になるぐらいまでのダウンスイングの前半で発生します。そして後半のインパクト直前では「しなり戻り」といわれるヘッドがシャフトを追い越す逆しなりが起きます(テイクバック始動時も手の動きが早いと発生しますが、これはタイミングを合わせには有効と思いますが、インパクト時のヘッドスピードにはあまり影響しないと考えますので、ここでは議論しません)。

 では何故ダウンスイングの初期段階でしなりが発生するのでしょうか?

トップでの切り返しの瞬間は、クラブの重量の約3分の2を占める重いヘッドはほぼ静止状態です。それを腕の力でグリップ部分を円軌道に引き始めて加速しようとした時に、重いヘッドは慣性で止まろうとしますから、シャフトにはヘッドとグリップの両方から力が加えられます。もしヘッドが動き始めた時に、グリップの引きが常にヘッドの進行方向と同じ直線上であればしなりは発生しませんが、ヘッドは慣性で直進しようとしますし、グリップは円軌道で引き下ろそうとしますからシャフトには撓みの力がかかります。ダウンスイングの前半はヘッドスピードが遅いので、感覚的にはヘッドを加速する力が弱いように錯覚しますが、腕に力を入れなくても無意識のうちに十分な加速のための力がシャフトにかかっています。そしてヘッドがそれに追いつけない分、その力はシャフトに蓄積されていきます。つまり切り返しからダウンスイングの初期は、シャフトにエネルギーを貯めることになります。そして、そのエネルギーはダウンスイング後半の加速の補助として使われます。

 前回お話ししましたが、スイングの過程の中で常に同じ力をシャフトに与え続けるのが困難なため、ダウンスイングの後半ではヘッドスピード自体は早くなってくるものの加速自体は相対的に落ちてきます。そうするとしなっていたシャフトの弾力による戻りが起こって、ヘッドの加速に寄与してきます。

 ただ、プロの写真をみてみると、すこし不思議なことがあります。シャフトのしなり戻りだけによるヘッドの加速を物理的に考えると、しなりが最大の時にヘッドに与える弾力も最大になってヘッドの加速が始まり、そしてシャフトが真っ直ぐな時にヘッドスピードが最大になります。ただこの時点で弾力が解放されるため加速への寄与は0になります。そしてそのあとに逆しなりになるにつれてシャフトの弾力はヘッドを減速する方向に働きます。そうするとシャフトが真っ直ぐな時にインパクトを迎えるのが最も効率的と思われます。ところが、例えば松山プロの写真を見ると、インパクト前にすでにシャフトは逆しなり状態になっています。 最初、私の理解は、インパクトの瞬間にヘッドはボールと反対方向に弾かれますから、逆しなり状態の方がインパクト時のフェース面が安定することになり、実際にボールの弾道とスイングのマッチングを図っていく段階で自然とそういうタイミングを身体が習得したのかと考えていました。

 ところが笹生プロの写真を見てわかるように、インパクト後も逆しなり状態が保たれています。なぜ逆しなり状態でインパクトを迎えた方が良いのかは、今後に探求してみますので、今回は現象の紹介にとどめます。

 さて、以上述べましたように「しなり」とは 、ダウンスイング前半での余裕があるときにその余裕分をシャフトの弾性エネルギーとして貯め、後半のヘッドスピードが上がって更なる加速の余裕がない時にその貯めたシャフトの弾性エネルギーをはき出してヘッド加速に使うものです。ただ、もしダウンスイング後半にも十分加速できるスイングならば、しなり戻らずに加速に寄与しませんから、しならないような硬いシャフトが適しています(もちろん材質の問題で、硬さにも上限がありますが)。一方ダウンスイング後半に加速が大きく減少するスイングの方は、しなりを十分使える柔らかいシャフトが向いています。ただしその場合も柔らかすぎるとインパクトまでにしなり戻りが生じず、マイナス効果しかありません。このことから考えるとシャフトの硬さは、本来ダウンスイングの状態で判断すべきです。単純にヘッドスピードが遅いから柔らかいシャフトを選べとか、見栄を張って硬いシャフトを選ぶものではありません。またアマチュアは、ヘッドの反発係数とかには敏感ですが、シャフトの「中調子」とか「先調子」には鈍感です。これも試して見ると、同じ硬さであっても振った感じが意外と違いますので、実際に試してみることをお薦めします。 
 最後に、もう一つ加えると、手首の力の弱い人は柔らかいシャフトが合ってます。前述したように「しなり」はグリップの動きが遅い時に発生するので、グリップの手首にはあまり負担はかかってないように感じますが、実際には相当かかってます。そのため、自分に合わない硬いシャフトでスイングするとシャフトがしならない分、手首への負担が増して無意識に肘を曲げて手首のコックを伸ばし、上腕を胸に近づける動作が入ります。その結果スイング軌道がズレたり、スイング半径が小さくなって良いショットになりません。またしなり戻りのダウンスイング後半はヘッド加速の縦トルクを加えるために、手首のコックは伸ばし(いわるる解放)つつありますが、しなったシャフトはヘッドを加速すると同時に、手首に逆向きの力、つまりコックの解放を阻害する力が働き、その強さはシャフトの硬さに比例します。それゆえに、シャフトが硬いと肘を曲げて手首の負担を回避しようとする動きが誘発し、これがいわゆるアーリーリリースの原因の1つとも言えます。従って、特に年齢を重ねて筋力が落ちてきた場合は早めにシャフト硬さをダウンすることをお薦めします。

 次回は、脳神経の見地より、「クラブを振ってボールに当てる」のではなく、「クラブを振ればボールに当たる」ように脳の視覚情報処理がなされているのではないかというお話をします。


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